あらすじ

　ある出来事から引きこもり状態に陥った少年、律(りつ)。

　カウンセラー兼家庭教師として定期的に部屋を訪れる女性・皐月(さつき)に少しずつ心を開いていった律は、気付けば彼女を唯一の心の拠り所にしていた。

　淡い憧れと、彼女の期待に応えたいという想い、そして自分のような存在の面倒をみてもらっている後ろめたさ。それらが一体となった感情から、律の心は少しずつ、だが確実に自立へと向かっていた。

　しかしそんな彼の努力を嘲笑うかのように、呆気なく彼女は命を落としてしまう。

　凄惨な事故現場を目撃した律の中で何かが壊れかけ――踏みとどまった。

　喪われた心の支えの代わりに、彼の精神(こころ)は、自分にしか見えない存在――皐月の幽霊を用意した。

　皐月の幽霊は生前のままの微笑みを浮かべ、言った。

「更生プログラムをはじめましょう」

　幽霊の目的は、彼女の死を乗り越えさせること。そして、律を再び学校へ通わせること。

　律の心は既に壊れてしまっているのかもしれない。しかしそれでも律は構わなかった。

　もう二度と彼女を失わない。失わせない。その想いだけが律を動かしていた。

　妄想。超能力。怪異。オカルト。真実と虚構が錯綜する中、本当に"怖い"のは人か、怪異か。

　荒唐無稽、怪誕不経な現代ホラーファンタジー。

　これは弱く、無力で、情けない少年の、痛々しい失恋の物語だ。

主な登場人物

・藍川　律(あいかわりつ)

一年ほど前の出来事から引きこもりとなった中学生の少年。

心が壊れるほどの負荷を受けたことで、ある能力に目覚めることになる。

・村瀬皐月(むらせさつき)

律のカウンセラー兼家庭教師の女性。

事故により若くして命を落とす。

・沢村柚那(さわむらゆうな)

律の同級生。陸上部に所属。

引きこもりとなった律を心配していた。

現代日本

似栖一(にるすはじめ)

ジャンル　ホラー〔文芸〕

キーワード　R15 残酷な描写あり青春ミステリーサスペンス怪談サイコホラー男主人公現代都市伝説オカルト幽霊ファンタジー妄想超能力おねショタ