言霊の俳諧師
あらすじ
僕の高校生活は灰色のスタートだった。一ヶ月前の中学の卒業式、意中の彼女に思い切って告白した僕は、完膚なきまでに叩きのめされてしまった。しかもその野武士のような彼女と、高校で同じクラスになってしまったのだ。罵倒された恋文代わりの俳句を上達させる為に文芸部入部を決心。その部室で言霊を持つ者が相対する連歌の座、吟詠境へ引き込まれる……
芭蕉の言霊を宿した高校生と、蕉門十哲をはじめとする俳諧師たちの言霊を宿した人々との関わりを描いた物語。【完結】
主な登場人物
ショウ
高校一年男子 俳諧師芭蕉の言霊の宿り手。
コトに告白するが返り討ちにあう。ツッコミが甘い。文芸部
コト
高校一年女子 芭蕉の最愛の女性、寿貞尼の言霊の宿り手。
時々ボケる。文芸部
ライ
高校二年男子 蕉門十哲のひとり向井去来の言霊の宿り手。
ショウの隣人で幼馴染。剣道部
父つぁん
高校一年男子 芭蕉の門人立花牧童の言霊の宿り手。
ショウの同級生。毛深い。剣道部
ソノ
大学四年女子 蕉門十哲のひとり宝井其角の言霊の宿り手。
就職活動と卒論製作に追われている。
リク
中学三年女子 蕉門十哲のひとり森川許六の言霊の宿り手。
ボクっ娘。外見は小学生男子。ソフトボール部。絵が上手い。
モリ
高校一年女子 芭蕉の門人坪井杜国の言霊の宿り手。
ショウの幼馴染で彼を慕っている。パソコン部。将来の夢は医者。
シイ
中学三年女子 蕉門十哲のひとり立花北枝の言霊の宿り手。
従兄の父つぁんを兄のように慕っている。趣味はピアノ。
セツ
高校一年男子 蕉門十哲のひとり服部嵐雪の言霊の宿り手。
学業優秀のイケメン。モリに惚れている。パソコン部。
部長
高校三年男子 貞門派の門人(のち破門)松江重頼の言霊の宿り手。
ショウとコトにより言霊を消滅させられる。文芸部部長。
ショウの母
故人 生前は蕉門十哲のひとり内藤丈草の言霊の宿り手だった。
故郷の寺に墓がある。
老医師
芭蕉の門人野沢凡兆の言霊の宿り手。
芭蕉七部集のひとつ「猿簑」と秘薬「本復丹丸」を去来に託す。
住職
かつては芭蕉の門人中村史邦の言霊の宿り手だった。
ショウの母の墓を見守り続けている。
佐保姫
春の季の詞(季語) 春を司る女神。其角からショウに譲り渡される。
夏至から冬至までは基本的に休眠期間。
老人
ショウに言霊について教えてくれる。
その正体は、逆宿り身の業で言霊の力を生命力に変え、数百年生き続けている与謝蕪村本人。
現代の世に生きる数少ない言霊の俳諧師のひとり。
設定
●言霊の俳諧師
吟詠境を開く業を持った俳諧師のこと。
●吟詠境
・己の言葉に宿る想いを具現化できる精神世界。
吟詠境が開かれている間、現実の肉体は眠ったような状態になる。
・発句によって開かれ、挙句によって閉じられる。
挙句を詠唱できるのは吟詠境を開いた者、つまり発句を詠んだ者である。
・同時に発句を詠む、あるいは、開かれている吟詠境の発句を詠むことで、
他の者も吟詠境に入ることが可能。
・吟詠境でもっとも力を持つのは発句、及び季の詞(季語)である。
それ以外の言葉はほとんど力を発揮しない。
●詞の業
発句と季の詞以外に特殊な働きをする詞がある。
宗鑑始め、多数の俳諧師によって創出されてきた。
無季
相手の季の詞、及び発句を封じる。
詠唱中は言霊の力を消費するので時間的限界がある。
奪霊
相手の言霊の力を奪う業。
相手と自分の力の差が大きいと一度の詠唱で奪いきれないことがある。
繋離詠
言葉と言葉を繋いだり切り離したすることにより、相手の意志を改変する業
現し身
言霊と現世の肉体をつなぐ業。
言霊の力の減少は肉体の生命力の減少に直結する。暗殺術として創出された。
現し世
吟詠境と現世をつなぐ業。佐保姫のような女神の遣い手が、現し身を詠まれた吟詠境に居る時のみ発動可能。心身共に消耗の激しい大業。
昔、この業を使った其角は、結果として己の宿り手の命を奪っている。
無詞
無季の業に加え、詞の業も封じる業。
宿り身の業
己の生命力を言霊の力に変え、死後も言霊として己の言葉に宿る業。
逆宿り身の業
言霊の力を生命力に変え、己の肉体を長らえさせる業。
作者名
沢田和早(サワダワサ)
ジャンル・キーワード
ジャンル ヒューマンドラマ〔文芸〕
キーワード 俳句 高校生
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すでに完結しています。ただし未回収の伏線があるので続編を検討中。
付録として「作中の発句一覧」を載せています。このページが一番アクセスが多いです。