Mr.Enigma のバックアップ(No.17)
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キャッチコピー
『その面白さ、弊社屈指の退魔師が保証します。』
『結論を急いではいけない。謎は、決して終わりを告げないから。』
概要
現代ファンタジー小説。記憶喪失の青年、バートことバーソロミュー・イゾラがとある事件を機に退魔師の世界に触れ、自らその世界へと入っていく物語。各章ごとに独立した物語が進むが、それぞれの章には他の章との密接なつながりがある。
あらすじ
Episode1「A bargain is a bargain.」
ヨーロッパにある小国、トークス共和国。そこの首都ライバックに住む青年、バートはある日幽霊が人を殺す瞬間を目撃してしまう。その10日後、彼のもとに『ベネー商会のセールスマン』を名乗る男、ジェームズ・フォータスが現れ、バートに自身が追いかけている事件への協力を求める。
身なりは整っているものの、いきなりハサミを売りつけたりと妙に怪しいジェームズの登場に困惑するバート。しかしそんなバートの命を狙う影があることに、ジェームズは気が付いていた。
Episode2「Grasp all,lose all.」
晴れて退魔師見習いになったバート。切った張ったの退魔の仕事に意気込むバートだったが、現実の退魔の仕事は極めて地味なものであることに得も言われぬショックを受ける。
そんな最中、ジェームズが突然、同僚であるはずのジュードから襲撃されてしまう。
ジュードに以前助けられたバートはその光景を見て驚くが、ジェームズにもジュードと戦わざるを得ない事情があった。
Episode3「The apple never falls far from the tree.」
ベネー商会のライバル会社、GSCに一人の女性がやって来た。彼女の名前はヴィバリー。姉を殺し、その姉の子供であるマーガレットを連れ去った男を退治してほしいと、ヴィバリーはGSCの職員であるアルフレッドに依頼する。
アルフレッドは独自に調査を行い、男がデーモンであり、ヴィバリーの姉は彼に殺されたという確信を得る。
そして見事男を追い詰めることに成功するが、その瞬間彼の目の前に立ちふさがったのはアルフレッドのかつての師匠だった。
一方ジェームズ達はひょんなことからある少女からとある男の行方を捜す依頼を受けることになる。男の素性を探っていくうちに、その男がただならぬ事件に巻き込まれていることが判明するが……。
Episode4「Names and natures do often agree.」
アルフレッド達とひと悶着あった後のある朝のこと。
自分の身に起きた異変に困惑することになるバート。上司であるダフネ女史の取り計らいで彼は何とか事なきを得る。
その後彼は様々な退魔師の仕事に携わることになるが、そのうちの一つに『遺品の回収』があった。
このライバックに住む資産家が最近死んだらしく、その資産家の家族から遺品の剣『アスカロン』を回収してほしいと依頼を受けたのだ。
アスカロンとは3世紀頃存在したとされる聖人、聖ジョージ(ゲオルギウス)の武器であり、竜殺しとして名高い剣だという。
依頼を受けたジェームズはアスカロンの伝説について『竜は異教徒の象徴であり、竜殺しの伝説は異教を排斥しキリスト教を布教するためのいわば宣伝でしかない』と、アスカロンそのものの存在に対して否定的。
依頼を受けた直後も彼はあまりの滑稽さに大笑いする始末。
しかしその『通称アスカロン』も単なる美術品の剣ではなかった。
主な登場人物
主人公及びベネー商会サイド
バーソロミュー・イゾラ(Barthoromew Isora)
主人公。通称バート。2015年7月頃、匿名の退魔師にその身元を保護され、病院に搬送される。保護された当時、自らの記憶を全て失っており、自らの名前さえ不明だった。
バーソロミュー・イゾラという名前は彼が保護された当時から付けていた認識票に書かれていた名前『バルトロメオ・イゾラ』から借りたもの。
ジェームズと出会うまでは掃除夫として働いていたが、後にベネー商会に退魔師見習いとして働くことになる。
ジェームズ・フォータス(James Fortus)
もう一人の主人公。第一協会所属。ベネー商会に勤めるうだつの上がらないセールスマン。退魔師としては極めて優秀な人物。
年齢不詳。恐らく30代半ばかと思われるが、若作りしているんじゃないかとバートから疑惑の眼で見られている。
黒い手の怪物、グラスプ(Glasp)を自らの影の中に住まわせ、使役するという特殊な力を持つ。
グラスプ(Glasp)
ジェームズの影に常に棲まう、黒い手だけの魔物。『黒い手』『影の手』『掌握するもの』などとも呼ばれる。ジェームズとはある種の共生関係(ジェームズがエネルギーを分け与え、グラスプはジェームズの身を守る)が成り立っている様子。
ジェームズに絶対の忠誠を誓っている様子。
影であるようだが、質量を持つ上に、ジェームズの能力を借りて無数に分裂し、大きさ及び形を自在に変えて戦う。
かなり高等な知能があるらしく、言語を理解し、筆談などで意思の疎通を図ることができる。
ウィリアム・ベネー(Wiliam Benet)
ベネー商会の社長。第一協会所属。自称元『科学者』(ジェームズ曰く『錬金術師』とのことだが、これについてはやんわりと否定している)穏やかで誰に対しても常に礼儀を欠かさない人物。
『人の上に立つ者』としての矜持が強いらしく、それについてジェームズから『あまり重く考えるな』と忠告めいたことを言われるほど(ただし、これについてはウィリアムも不快だったらしく『君に忠告される筋合いはない』とやり返している)
毎日午後2時になるとジェームズ達の居る部署のコーヒーサーバーからコーヒーを飲んだり、昼休みにジェームズの淹れた紅茶をごちそうになったりするため、ジェームズから『変わったオッサン』扱いを受けている。
アイリス・ダーシー(Iris Dacey)
ウィリアムの秘書の一人。ジェームズとは親しい間柄である様子。彼女に粉を掛けようとする人物がいるとジェームズが威嚇を始める。
シドニー・ロトス(Sidney Lotus)
第一協会所属。ベネー商会で最も優秀な魔術師とされる人物。ジェームズが所属する係の係長補佐。ダフネ女史曰く『理系オタクで魔術オタク』。
好奇心旺盛で魔術はもちろん自然科学、科学史等にも造詣が深いようだが、その知識欲の旺盛さ故に時に周囲を振り回す。
ダフネ女史(Miss Daphne)
第一協会所属。代々優秀な魔女を輩出する家系に生まれた女性。ジェームズが所属する係の係長であり、彼等の直属の上司に当たる。周囲からはチーフと主に呼ばれる。
怒らせると相当怖いらしく、彼女の逆鱗に触れると蛙にされてしまうとのもっぱらの噂。
クリス・レイクス(Chris Raikes)
第一協会所属。ジェームズ達の同僚。23歳。風を操る能力の持ち主。ベネー商会の中でも極めて良識的な好青年であり、時にベネー商会の良心とさえ称されるほど。
ライラ(Lyla)
風の妖精。クリスの保護者を自称するが、実際はクリスが保護者状態である。身長は3cm程。何かと悪戯好きなため、ジェームズにお仕置きを受けることが多々ある。
ジュード・マクスウェル(Jude Maxwell)
ジェームズ達の同僚。デーモンの退魔師。第一協会所属。武器はシルバーメタリックの回転式拳銃。
自らの身体を霧にする能力、高い再生能力と他者の傷を治癒する能力を持つ。
シニカルで精悍な顔立ちなため粗雑な人物と見られがちだが、意外とフレンドリーで、初対面のバートからも好印象だった。
GSCサイド
アルフレッド・ヒース
28歳。第二協会の退魔師。ヘーゼル色の鋭い瞳と金色のショートヘアが印象的な青年。
武器は自動式拳銃。
性格は極めて冷淡でぶっきらぼう。悪魔に対しての憎悪を常に抱いており、それ故に時に暴走する。
『人はエニグマと共に生きるべきではない』と断言しており、それ故にかつての師匠と袂を分かつこととなる。
サイモン・オーデン
魔術師。銀髪のショートヘアに深青色の瞳の男。年齢は30代半ば。魔術師の一族の生まれらしい。第二協会所属。
一応、アルフレッドとマルヴィナの直属の上司。
性格は極めて真面目。現実主義者で理解力があり、ジェームズをして『物わかりがいい』と言わしめるほど。
マルヴィナ・ピリー
年齢不詳の退魔師。第二協会所属。プラチナブロンドに水色の瞳の女。
武器は細身のナイフと長剣。ある事情により、霊的なものに対する極めて高い感知能力を有する。
その他の退魔師
警察関係者
ノア・スプルース(Noah Spruce)
ライバック市警の刑事。52歳。第一協会所属の退魔師でもある。真っ青な瞳が印象に残る男。
ジェームズ曰く「食わせ者」らしく、人のものをスリで取ってしまったり、ロッカーの鍵を針金で開けたりと意外と器用。
バートはノアと面識があるようだが……?
ちなみに息子がいる。
ニコラス・フォレスト(Nicolas Forest)
ライバック市警の刑事。ノアとコンビを組んでいる。
ジェームズのことを必要以上に毛嫌いしている節がある。
一見するとツンケンしていて感じの悪い人物に見えるが、実は愛妻家で人のいい男。
グレッグ・アッシュ(Greg Ash)
ライバック市警に勤務する警察官。死体安置所の管理をしている青年。
バルトロメオ・イゾラの記憶に出てくる人物
バルトロメオ・イゾラ(Bartolomeo Isora)
バートが時折『自らの記憶』として思い出す人物。旧スロニア連邦共和国軍に在籍していた兵士。
1963年8月26日生まれ。(つまり現在存命ならば52歳であり、これはバートの年齢とは明らかにかけ離れている)血液型はRH+B。
ブロアニアの片田舎、ブリアスの生まれ。父は石工。8人兄弟の次男。18歳の時に家系を支えるために軍に入隊。
25年前ブロアニア独立軍に移籍した後、彼が所属していた中隊が丸々一つ壊滅するという奇妙な事件で死亡したとされる。実際に遺体は見つかった訳ではないが、その事件現場で認識票(ドッグタグ)の片割れが発見された為、死亡したと見なされた様子。
実際、バートは夢の中でバルトロメオとして再三殺害される夢を見ている。
ノア(Noah)
トークス出身。バルトロメオの友人。父は腕のいい時計職人だったが、そんな仕事を嫌って軍に入隊した。トークス出身だった彼は25年前にトークス独立戦争に駆り出されることとなった。
アンドレア(Andrea)
ブロアニア出身。バルトロメオの友人。母がセドリナ人、父がブロアニア人という家庭で育つ。
無口だが、口を開くとシビアな発言か毒舌しか言わないという困った性格。
パオロ(Paolo)
ブロアニア出身。
アンドレアとは対照的にフレンドリーでノリの軽い青年。
用語
退魔師
エニグマ (Enigma)
謎めいたもの、不可解なものという意味。
退魔師達は霊的な要素を含む生命体や物質の総称として用いている。
悪魔(The devil)
デーモン(高等な霊的存在)の一種であり、人間に多かれ少なかれ害悪を及ぼす可能性を持つ・またはかつて害悪を及ぼしたものを示す語。
上記は第一及び第二退魔師協会がともに定義している語であるが、『天上の教会に反逆した』ことを条件として悪魔と判断されるデーモンもいる。
悪魔はその力の強さによって分類される。
デーモン(Daemon)
エニグマと呼ばれる存在の内、高等な霊的存在の総称。
いわゆる悪魔や天使、高位の精霊もこれに該当する。
尚高等かどうかについての判断基準は「人間とほぼ同等の知能を持つか」らしい。
ベネー商会(Benet&CO.)
トークスの首都、ライバックに本社を置く、日用品販売を手掛ける商社。
その実は退魔師業界屈指の会社でもあり、社員の半数以上がトークス退魔師第一協会の所属。
社長はウィリアム・ベネー。
会社のロゴには竜が描かれている。
トークスでも屈指の有名企業らしく、ラジオやテレビでもCMが流れている。
前身は退魔師事務所だったが、事業を始めたウィリアムがそこの所長に「巻き込まれた」らしく、いつの間にか商社になっていたらしい。
ガーゴイル警備保障(Gargoyle Security Company)
通称GSC。ベネー商会のライバル会社。
トークス退魔師第二協会を作った元凶。
本業である警備業務のノウハウを生かし、退魔師業界でもベネー商会の前身に迫る勢いを見せた。
魔女及び魔法使い(Witch Wizard)
魔女(witch)は女性の魔法使いを指し示す語。魔法使いは以下の技能に特化した者のことを指し示す総称であるが、魔法使いの訳語であるwizardは主に男性に用いられる。
魔法(Witch craft)を行使する者のこと。
魔法とは主に身の回りの品に超自然的な能力を付加させたり、周りのものの霊的性質を利用して驚くべき現象を引き起こす。
魔術に比べてその効果は短期的かつ狭い範囲に限定される場合があるが、それ故に即効性が高く、小回りの利く超常現象を操れる。
薬品や薬用植物等に対して造詣の深い者も多い。
また、魔術師と共同で魔法及び魔術の研究を行う者も多数で、そういう人物は概して魔術のオペレーターとして優秀である。
魔術師(Magician)
魔術(Magic)を行使する者のこと。こちらは魔女とは違い、性別に関係せずに魔術師と呼ばれる。
自然科学に対しての深い知識と理解力が要求される職業。
魔術とは魔法とは対照的に極めて大規模かつ長期的な超自然現象を引き起こすことを得意としている。その威力の高さは折り紙付きだが、それ故に行使の際には精密な計測、設計を必要とし、非常に高い学問のスキルを要求される。
非常に高度な魔術の場合、街一つに何百年単位の耐久力を持つ結界を張ることも可能。
しかし如何せん術のほとんどが大規模すぎるため、小回りが利かないという致命的な短所を抱えているとも言える。
舞台
現代のヨーロッパの某所にある架空の地域。かつてはスロニア連邦共和国と呼ばれていたその国は、東西冷戦終結と建国の父であった大統領の死を機に分裂することになる。
やがて独立戦争により複数の国に別れ、それからおおよそ四半世紀の時が経った2015年の10月から、物語は始まる。
トークス共和国
本作の舞台。真っ先に独立宣言をし、10日間の独立戦争を経て『トークス共和国』という名で独立した。首都はライバック。
ブロアニア共和国
セドリナ共和国
スロニア連邦共和国
作者名
浦辺 京
ジャンル・キーワード
ジャンル ファンタジー
キーワード 退魔、現代